• 日本の技日本の木 国産木製スプーン

    日本に生育する広葉樹の中でもっとも親しまれてきたのが欅。日本人が木目でまず思い浮かべるのは欅の板目だと言われています。
     民家の梁や大黒柱、家具に使用され、生活に欠かせないお椀の木地に至るまで幅広く活用され愛されてきました。
     私どもは堅く締まった欅の特性と美しさを今の暮らしの中で見直していただきたいと考えております。
     口当たりが優しく丈夫なスプーンをはじめ、玄関を引き立てる靴べら、伝承の健康具、力強い食卓など欅の魅力を引き出すクラフトの可能性を求めて参りたいと存じます。

     栗は秋の味覚として親しまれています。木材としても様々な用途に使われてきました。特にタンニンを多く含み腐食や水に強いため建物の土台や水廻り、屋根材さらに玉杓子やこね鉢、箸などに用いられてきました。
     縄文時代の遺跡として知られる三内丸山遺跡では四千年以上前から、栗が栽培されていたと考えられています。
     身近な素材の中から用途や美を見つけだした日本人の知恵に感銘を受けながら、水や腐食に強い栗を活かす現代の生活用具が出来ればと希い、制作いたしております。

     歌に詠まれ、日本の文化に深く根ざした「木」といえばまず桜が思い浮かびます。
     桜(本桜)の心材は、赤みを帯びた褐色で、木肌は緻密で狂いも少なく、強靭で耐久性が高いのが特徴です。建築の中では敷居や高級床材に使われます。長年の使用にもささくれることもなく、非常に摩耗しにくいことが好まれる理由です。
     花で人を楽しませてくれたサクラが、こんどは皆様のテーブルの上で食事を楽しむお手伝いをしてくれたらと思います。

    黒柿

    天然の造化の妙と呼ぶべき黒柿。正倉院御物にも遺された黒柿のモノトーンの美しさは深い心の世界を彷彿とさせてくれます。
     長い時間をかけ、おそらくは決して平穏ではない環境や微生物の働きで、柿の古木の内部に生まれた文様に日本人は心を動かされ、器物に生かすことを思いついたのです。
     日本人が自然の中から見つけだした黒柿の美しさ。稀少で不均質ゆえにそれを活かすには思案とセンスと技術が求められます。仏教寺院や茶道具、香道などの建築や器物にその魅力は連綿と継承されてきました。